僕の庭
「花びらが、絨毯みたいね」


佳穂が足下に広がる花びらを見ながら言った。


「歩いてみればいいよ。君だけの絨毯だ」


「もう、おじさんって、画家の割に分かってないのね。この絨毯は踏んだらお終いなのよ。踏んでしまったら、ただの泥だらけの花びらになってしまっちゃうじゃないの」


佳穂は分かってないな、と言うように首を振った。


「そうか、そんなものか」


「そんなものよ」


僕と佳穂は、静かに湯飲みの中身を開けながら桜を眺めた。


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