僕の庭
空は入道雲がむくむくと湧き、蝉は短い光の世界を謳歌し、夏が始まった。

僕の荒れた庭は、少しだけ綺麗に整えられた。

桜がすっかり葉桜になってしまった頃、真崎さんが麦わら帽子にジャージ、手袋に運動靴といういでたちで、縦横無尽に生えた雑草を片付けてくれたのだ。
毎年真崎さんは手入れを申し出てくれていたのだけれど、僕はそれをすべて断っていた。
前述の通り、庭の手入れに意義を見いだせなかったからだ。

しかし、今年は、ちょっとした気紛れでお願いした。
春風の完成以来姿を見せない、佳穂の姿が脳裏を霞めたのも、多少の原因かもしれない。
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