僕の庭
僕は佳穂がしていたように、ラムネの瓶を傾けてビー玉を転がしていた。

透明なガラス玉は、光を反射してキラキラ光っていた。
その光は、いつかの古い日を思い起こさせた。



日に焼けて、皮が剥けるまで遊んだ友達。

魚を釣った、冷たい川の水。

山で遊んだ、あの土の感触。

夕暮れに染まる田畑。

泥まみれになって帰ってきた僕を叱る母。

なだめる父、笑う兄たち。

暖かな食卓。


気付けばいつの間にか、泡のように消えてしまっていたけれど、確かに存在した日々。


「……おかしいな。普段はこんな感傷はないんだが」


「いいじゃない。たまには昔を懐かしむことも必要よ。埃をかぶって見つからなくなっちゃうもの」


「まだそんなに呆けてはいないぞ」


少しおどけて言った僕に、佳穂は慌てて言った。



「やだ、そんな意味じゃないわ」


「はは、分かってるさ。じゃあ、埃をかぶっては困るから、少し話を聞いてもらおうかな」


「ええ、ぜひ」
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