僕の庭
思い出の引き出しはきりがなくて、気付いた頃には、柔らかな夕暮れの光が縁側に差し込んでいた。


「やあ、すまない。こんな時間になっていたか」


奥の部屋の壁時計が、六時を知らせる鐘を鳴らした。


「すまないな、僕の長話なんかを聞かせてしまって」


「ううん、楽しかった」


佳穂はすっかり空になってしまった瓶を脇に置いて立ち上がった。


「あたしの方こそ、長居してしまってごめんなさい。そろそろ帰るわね」

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