僕の庭
「ああ、でもよく寝たわ」


佳穂はそう言いながら、ついっと外の庭を見渡した。
そして、何かに気がついたように、ぴたりと視線を止めた。

どうした? と僕が尋ねようとする前に、くるっと振り向いて、嬉しそうに言った。


「分かった」


「何がだい?」


「雨降りを好きな理由の意味よ。分かっちゃった」


僕は手にしていた筆を一旦置いた。


「というと?」


「この匂いでしょ。雨と、土と、植物の混じりあう匂い。おいしいかはわからないけど、でも、いい匂い」


「……そう。当たりだ」



僕はどきどきする胸をそっと押さえた。

そうか、分かるのか。


「えへへ。すごいでしょ」


佳穂は胸を張って、それから深く息を吸い込んだ。
ふうう、とゆっくりと息を吐いて、得意気に笑った。

「ああ。すごいな」


僕も、彼女の真似をするように、深呼吸して笑った。

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