僕の庭
「お楽しみ?」


「ああ。だから見ないでくれ」


佳穂は不思議そうな顔をしながら座り直した。


「完成したら、見せてくれるの?」


「ああ」


ふむふむ、と佳穂は悪戯っぽい笑みを浮かべて言った。


「分かった。でも、そこまで言うならすごーく期待しちゃうんだからね?」


「それはまた、荷が重いな」


はは、と僕は笑って、キャンバス前の椅子に腰掛けた。


「でも、満足のいくものが描けそうな気がしているよ」


「そう。出来上がりが楽しみだわ」



佳穂は曇った窓ガラスの向こうに視線をやった。
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