僕の庭のレビュー一覧
心に、グッ…と来ます。 本当に読んでよかったと思える作品でした。 だから是非、たくさんの人に読んで欲しい。 全編通して、1時間程度だと思います。 あなたの時間を、この作品に頂けませんか? 個人的には、冬の寂しい昼間に読んでいただくのがベストなのではないかと思っています。
読み終えるのがもったいないくらいでしたが、でも途中でやめることができなくて流れるようにページをめくって行きました。 画家の老人と、老人のたったひとりの家族である猫と、春に突然現れた女性との、巡る季節の中でのお話。 のんびりと過ぎて行く優しい日常の物語かと思っていたのですが、過ぎて行く季節の最後のときに明かされた小さな奇跡に涙が止まりませんでした。 丁寧な言葉で紡がれるひとつひとつの思いと、優しさと、愛情。どれもが綺麗に織り重なって、最後の、本当に最後の瞬間に辿り着いたとき、彼らがきっと感じていただろう幸福を少しだけ分けてもらえた気がしました。 とても素敵なお話。静かな、ひとりだけの場所で、ゆっくりと読んで頂きたいです。
それは桜が舞い散る春 それは色とりどりの朝顔 それは赤い紅葉であり それは雪景色 ただ どの絵にも 君がいた どの絵にも 僕の心にも
なんて綺麗で、繊細な物語だろう。 読後、いえ読んでいる最中からそんな世界に囚われ、夢中になってページを捲りました。 画家としてひっそりと暮らす松葉杖の老人と、愛猫のびわ。二人の静かな世界に現れたのは、一人の少女。 花が咲き 花が枯れ 花が乱れ 彩られる庭 そして、明かされる思いと絆 繊細で美しい気持ちに、胸が熱くなりました。 劇的な展開のある作品ではありません。 ただ、ひたすら美しく、そして心に残りました。 目に見える世界は、ほら、こんなにも美しい。美しく彩ることができる。 たくさんの人に読んでもらいたいと、心から思います。
どの季節に読むべきか。 迷うほどに美しく、決して選べない美しさがある。 まさに、四季。 彼らと共に季節をめぐり、邂逅に震えた。 ――『邂逅』 この言葉の真の意味をここに見る。