パーフェクトラブ〜激愛されて困ってます〜
「いらっしゃいませ」

「......こんばんは」

「美結雨ちゃん、久しぶりだね」

爽やかに挨拶するこの人は、嶺二(れいじ)さん。お兄ちゃんと同級生だ。嶺二さんも容姿端麗。

お兄ちゃんと嶺二さん本当に40歳なのか?なんか見た目が若すぎだ。でも落ち着いている。確か、嶺二さんも奥さんがいて、可愛らしい人だ。子供もいるって言ってたからきっと2人に似て、可愛いのだろう......

はぁ〜。子供かぁ。

私も子供欲しいなぁ。元谷さんに似た可愛い男の子と女の子。想像したらニヤけてしまった。

ふふっ。

お兄ちゃん夫婦も子供が出来たら可愛だろうなぁ。

お兄ちゃん夫婦は、ずっと付き合っていたが、去年やっと結婚したのだ。私が幸せになるまでは、結婚しないって言ってて。あまりにも花鈴音さんが可哀想で、私がお兄ちゃんを説得した。このままじゃ、花鈴音さん他の男に取られるよって。私は、今でも幸せだからって言って。


「美結雨ちゃん?」

「……あっ、ごめんなさい。嶺二さんに会ったら、昔のこと思い出しちゃって……」
昔のこと以外にもいろいろ妄想したけど。それは言わないことにしておこう。

「何を思い出したの?」

「まぁ、色々と……」

「気になるなぁ……」

「気にしないでください。あっ、お兄ちゃんいます?」

「まぁ、いっか。巧海ね。席、案内するね」

私は、カウンターの端の席に座った。

「いらっしゃいませ」

お兄ちゃんが奥から出てきた。

「お兄ちゃん……」

「美結雨、珍しいなぁ。お前から来るなんて……」

お兄ちゃんが嬉しく笑う。

やっ、やばいよ。その笑顔。お兄ちゃんじゃなきゃ、キュンってしちゃうところだぞ。

「パンケーキ食べたい」

「はぁ?いきなり......お前、何かあったのか?」

「うん、死にそう......」

「わかった、待ってろ」

お兄ちゃんは、キッチンへ向かった。

パンケーキ。私の大好きなパンケーキだ。

パンケーキと言っても、お兄ちゃんが作ったパンケーキじゃないと、ダメなのだ。

最近は、ほとんど食べていない。今の仕事に入ってすぐぐらいだから、もう10年近く食べていない。

昔から私が落ち込んだり、悩んでたりすると、作ってくれるパンケーキ。

生クリームたっぷりで、フルーツが沢山添えてある。上からハチミツをかけて出来上がり。想像すると、甘そうだがそれが程よい甘さなのだ。

それを食べると元気になれる。

お兄ちゃんは、いつもそうやって私を励ましてくれたのだ。

「お待たせ」

「ありがとう」

「いただきます」

私は、目を輝かせてひとくち、口の中に入れる。

「う~ん。やっぱりお兄ちゃんのパンケーキは美味しい〜」

やっぱりお兄ちゃんの味だ。

「美結雨は、本当に美味しく食べるよな」

私を見て、お兄ちゃんが微笑む。

「だって、本当に美味しいんだもん」

「バカか。でも嬉しいな。お前に褒められるのは......」

お兄ちゃんが、照れた。

普段、キツイ口調のお兄ちゃんだが、たまに優しくなる。だから、私も自然に笑顔になってしまう。

よし、これでバッチリだ。明日、元谷さんに会っても平常心でいられる。
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