No Way Back
だったら、これで何も言わなければいい。
波風立たせなきゃいいんだ。
それよりも、気難しいとこばかり頼むものだ。
上手く交渉しないと、そっぽ向かれてしまったらおしまいだ。
「果林、ファックスきてたよ」
「あ、ありがとう。そこ置いといて」
「また、咲夜くんから無理なお願いされた?」
沙菜が笑いながら私に話しかけてくるということは、何も知らないんだ。
少なくとも、東條さんは何も言っていない。
「またって言わないで。私は、もうしたくないのに」
「無理じゃない?果林以外に出来る人いないんでしょ。それに、文句を言いながらも果林はやるんだから。咲夜くんも頼むんでしょ」
「仕事なんだから、やらなきゃ仕方ないじゃん。頼まれた以上、やるしかないもん」
社内の空気も、東條さんも沙菜も変わっていない。
だったら、私も気にしなければいい。
それでも、東條さんと2人きりになることは避けたいけど。
大きな案件も終わったし、そうそう2人きりになることはないと思うけど。