No Way Back
「ねぇ、あの時、本当に何もなかった?」
「別に、いつもと変わらないよ」
「じゃあ、何でずっと連絡繋がらなかったの?」
これは別に、私が責められている訳じゃない。
沙菜に詰め寄られているのは私だけど、私のことではない。
「だから、そんなこと知らないって。東條さんに直接聞きなって」
沙菜が気にしてるのは、飲み会の時のことだ。
あの日、飲み会中も終わったであろうあとも、次の日でさえも、東條さんから連絡がなかったらしい。
そりゃあ、連絡している場合じゃないだろうね。
私とヤってたんだから。
……って、余計なこと思い出した。
沙菜の前で顔を赤くしている場合ではないのに。
「咲夜くんにラインしてるのに、返事がないんだもん。既読スルーされてる」
「え、マジ?それなら、直接話せばいいじゃない。休憩時間とかに」
「……休憩時間も忙しそうなんだもん。話しかけにくい」
その様子を見て、少し変だなと思った。
確かに、ここのとこ東條さんは忙しそうにしている。
というより、社内にいることが少ない。