No Way Back
「あ、ありがとうございます」
頼まれたものを引き取って、そそくさと自席へ戻った。
なんなの、心臓に悪すぎる。
私の気のせい?
なんか、甘い気がする。
飲み会での出来事のせいか。
こんな東條さん、私は知らない。
こんなところ、沙菜に見られなくて良かった。
今はちょうど出ているから。
見られていたら、何言われるか分かったものじゃない。
東條さんも、もう少し考えて欲しい。
自分には彼女がいるって自覚があるのかな。
私に手を出したことも含めてだけど。
「イケメンは、何をやっても絵になりますねー」
私が自席へ戻ったのを見計らって、奈々ちゃんがそう言う。
「イヤイヤ、感心するとこでもないから」
呆れたように私が返すと、また爆弾発言をする。
「でも、お似合いでしたよ。自然なカップルみたい。
私は、手より額をくっつけた方がドキッとしますけどねー」
「あのね……私はドキッとするよりビクッとするわ。沙菜に見られてないか」