No Way Back
見た目がいいものだから、同じチームだろうがテンションが上がるらしい。
ただ、恋愛対象とはならない。
なぜなら、彼女がいるから。
それも、チームは違えど同じ社内に。
「東條さん、この際言わせてもらいますけど、私まで振り回さないで下さい」
「何で?逢沢じゃないと出来ないだろ」
「イヤ、それこそ奈々ちゃんでも出来ます」
「そうか?臨機応変に対応出来るのは、逢沢だけだろ」
「……だからって、無茶振りしないで下さいっ」
いくら文句を言ったところで、のらりくらりとかわされる。
もう少し労って欲しいけど、なぜか迷惑を被るのは私だけだった。
だから私は、いくらこの人の顔が良くてもドキドキはしないし、声のトーンだって上がらない。
むしろ、下がる。
この人に対して、怒ってばかりなんだ。
毎日こういうやり取りをしているから、チームの名物になっているけど。
「こんな時に怒るなよ。飲んで忘れろよ」
笑いながらそう言って、他の輪の中へ入っていく。