No Way Back
この人、自分が当事者って自覚がないのだろうか。
そもそも、そのおかげで私に火の粉が降りかかっているって分かっていないのだろうか。
「リーダーもああ言ってますし、果林先輩も飲みましょう」
「……そうだね。せっかくの飲みだしね」
呆れながらも、もう一度奈々ちゃんと乾杯して飲む。
あちこちでも、グラスを合わせる音がする。
仕事中の雰囲気と全然違う。
今までの疲れなんか忘れたように騒いだ。
こういう時は、上司、部下、先輩、後輩も関係ない。
大きく羽目を外さない限り、ある程度の無礼講は許される。
ほとんどがこの場限りのことだから。
私も、奈々ちゃんや他の人たちと楽しく飲む。
社内の飲みでも、女が集まればガールズトークが始まる。
そのため、ほとんどの恋愛事情を把握していた。
私が結婚していないことも、彼氏がいないことも知られている。
そんな楽しく飲んでいる中、急にスマホが鳴る。
こういう時に鳴るモノに限って、イイモノはない。