キンダーガーテン五      ~ここが居場所~
「初めまして、宮崎です。」

「千尋の姉の伊藤唯です。
こちらは千尋の夫と私の婚約者です。」

「初めまして、千尋の夫の石井和也です。
千尋の事で、わざわざご足労頂きありがとうございます。」

「私は、姉の唯さんの婚約者の森悠人です。
先程は、急なお電話をさせて頂き申し訳ありません。
早速ですが、お手紙の内容を詳しくお聞かせ願えますか?
私どもは、宮崎さんのお名前を
千尋ちゃんから伺ってないもので…………。」

初心者の人との会話が苦手な唯に変わって

先生が話を進めてくれる。

「はい。
私が千尋さんにお逢いしたのは………
昨年の夏です。
多分まだ高校生だったと…………。」

一昨年の夏。

そう聞いて、私も和也さんも顔がひきつる。

一昨年の夏に良い思い出はないから………。

夏休みに、尋ちゃんが行方不明になり

やっと見つけた時は…………入院生活を送っていたから。

それは和也さんも同じで………

尋ちゃんは、和也さんにも連絡を取ってなかったの。

後で分かったことは………

お父さんのお相手の彼女………。

当時は、部下と上司の関係で

お父さんは亡くなった部下の代わりだったらしいけど。

産婦人科から二人が出てきたのを見た尋ちゃんが

二人を追って駅の階段から落ちてしまって

そのまま入院することになったの。

追った先が県境と遠く未成年だった為。

お父さんに連絡が入って

家族にその事を知られたくないお父さんが

こっそり手続きを済ませた為行方不明のような状態になったんだ。

当時、私も先生も。

和也さんも遥ちゃんも樹さんも………。

本当に生きた心地がしなかったの。
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