キンダーガーテン五      ~ここが居場所~
子供の頃から住んでいた町なのに………

何処をどう歩いているのか分からない。

多分、悠君がいないと………

唯の世界に色が無くなるんだと思う。

……………………会いたいよぅ。

グルグル回っていると

いつの間にか見覚えのある、近所の公園に戻って来ていた。

この公園は………………

以前、お父さんの浮気が発覚した時に

慰めてもらった所。

それから…………………

初めてプロポーズしてもらった所なの………………。

『俺なら唯ちゃんを一人にしないよ。』って言ったのに…………。

ねぇ、悠君。

唯は、今一人ぼっちだよ………。

淋しくて………涙が止まらないよ。

もうダメなのかな?

嫌いにならないでよぅ…………。

ぎゅっと抱きしめて。

苦しい。




「こんにちは。」

突然、後ろから声をかけられた。

「……………………。」

「今日は、一人ですか?
はるか君、元気ですか?」

……………………はるか?

…………………………………………えっ??

はるかという呼び名に、顔を上げると。

先日お世話になった、後藤動物病院の先生。

「あっ………………」

泣き顔を見せる訳にいかないので…………俯いてしまう。

「…………………………こんにちは………。」

一応返事を返すと

ストンと隣の席に。

えっ!

慌てて立ち上がると

「その顔のまま帰るつもり?」と言って腕を引かれた。

「キャッ!」

逃げようとしても、力の強い男性に勝てるはずもなく…………

元の席に戻された。
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