キンダーガーテン五      ~ここが居場所~
「手を…………離して下さい………………。」

必死に抜こうとしても…………

「その涙の訳を聞かせてもらうまで、離さない。」って…………。

「困ります。
泣いてないので…………。」

ウソだと丸わかりだけど

悠君以外の人に触れられるのなんて………嫌。

「ホントに…………」

怖い程しつこい後藤先生に、恐怖を感じていたら………




「唯。」と言って

後藤先生の握ってる腕を離して、ひねり上げた人…………。

「悠君!?」

………………………じゃなかった………………。

「ごめんね、悠人じゃなくて。」そう言って笑うと

さりげなく唯を立たせた。

「ちょっと、あなたは誰ですか?」と聞く後藤先生に。

「唯は、妹ですけど。」と

「あぁ~
お兄さんですか?」と急にフレンドリーになる後藤先生。

お兄さんって言うか………………

戸惑っていると、シッ!って人差し指を口に。

「あなたは?」

「動物病院の者です。
先日、ウチに来て頂いて。
偶然お見かけして声をかけたら、涙を流していたから
お話しを聞こうと。」

「それはありがとうございます。
でも、今は診察の時間じゃないですか?
こんな所に偶然って…………大丈夫ですか?」

お兄さんの指摘にしどろもどろになる後藤先生。

「ちょっと小耳に挟んだんですけど…………
患者さんのお家の近所を、よく散歩されるとか?
俺の友達が、探偵してまして…………
病院の先生が、ストーカー紛いのことをしてるから
調査してくれって依頼が数件きてるらしいんだけど………
先生の事じゃないですよね?」って。

えっ?

ストーカー??

「あっ、いや………
また、はるか君を連れて来て下さいね。」と言って………立ち去った。

……………………………………。

「ちょっと、行こうかぁ。」

お兄さんの急な登場に…………

頭の中が、益々混乱する。
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