キンダーガーテン五 ～ここが居場所～

「お袋………サンキュー。
だったら、今日はこれで帰る。
旅行から帰って来て、ゆっくり顔を出すよ。
後………
誕生日にもらった旅行券で行って来る。
楽しんで来るわぁ。」

そう言うと

唯の手を取って立たせ、玄関に向かう。

「えっ。
…………………でも…………」

引っ張られながら振り向く唯に

「良いんだよ。
娘は、甘えて楽しんで………
帰って来たら、良い笑顔を見せに帰っておいで。」と

お義父さんにニッコリされたの。

娘…………。

帰っておいで…………。




唯は

もしも先生と別れたら………。

『一人ぼっちになってしまう』

そんな事ばかり想像してた。

けど………本当は。

先生のお父さんとお母さんが

唯のお義父さんとお義母さんになって、娘だと言ってもらっている。

このお家も………

お邪魔するんじゃなくて。

帰っておいでって…………………。

………………………幸せ。

ますますポロポロ溢れる涙に。

足を止めて

「まったく。」って笑いながら肩を引いてくれる悠君。

「兄貴の所に悠を預ける予定だったんだけど。
お袋………頼んで良い？
迎えに帰って来るから。
その時に、唯の笑顔を見せるから。」って。

温かい。

こんな家庭を……………

悠君と作っていきたい。

明日の午前中に悠をお兄ちゃんが迎えに来て

ここに送ってくれると決まり。

「「行ってきます。」」と

笑顔で帰って行ったの。