キンダーガーテン五      ~ここが居場所~
バタン。

玄関のドアが閉まる音が、遠くで聞こえた。

「唯ちゃん………………………出ていくのは………待って。」

洋介さんとコウ君が言ってたように………

情けないほど弱々しい悠君の声がする。

「………他の人と一緒になる方が幸せになるんでしょ?
だったら、新しい人を早く見つけに行かなくちゃ!」

意地悪言う唯に

「ごめんなさい。
本当にごめん…………。
唯ちゃんに他の人って…………無理だから。
考えるだけで、おかしくなる。
さっきまで………どうしてあんな事を考えられてたのか………。
お願いします。
もう二度と『別れる』なんて………言わないから。」って。

いつもだったら『うん、分かった。』って言うんだけど………

今日はそれじゃダメな気がするの。

これが夫婦になるってことなのかな?

悠君がよく言ってる

『一人で悩むな。』『頼って』って言葉が

今はブーメランのように、自分に返ってきてる。

「だったら、ゆっくり話そう。
じっくり話し合ってから…………考える。」

分かったって言わない唯に………ビクッてしてる。

病気の悠君に意地悪する自分は、とっても性格が悪い。

ごめんね…………悠君。
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