放課後の続き
「卒業生、入場。」

厳かな音楽が流れる体育館に。

可憐な花を胸につけた、生徒達が歩いて来る。

久しぶりに見たかなは………

痩せ細り

ハツラツと明るかった彼女の面影すらない。

大丈夫か??

それが率直な思いだった。

俺は………

自分だけが苦しみ、別れを悲しんでいるものだと思ったが…………。

もしかして…………

かなも、辛く悲しい思いを抱いてる??

かなが俺との恋を……

重荷に感じて別れる決心をしたと思ったのは…………

間違いか??

今が卒業式だということも忘れて

ただひたすら、かなの様子を目で追う。

途中亨に

「ガン見し過ぎだ!」と

小声で注意されたが…………

そんな事に構っていられない。

もしも俺の判断が間違っていたら…………

このチャンスを逃すと

かなは、遠い大学に行ってしまうのだ。

卒業生代表として、壇上に上がり挨拶するかな。

こんな姿でも、受験し頑張っていたのだと思うと…………

今すぐにでも、壇上にかけあがり…………抱きしめたくなる。

だけど今の俺は………

そんな権利すらない。

………………………婚約を解消されているのだから……………。





「幼稚舎から通ったこの学舎を
今日、巣立つことは……
誇りに思うと同時に、一抹の淋しさを覚えます。
ここは私の原点であり、沢山の事を学びました。
時に喜び、時に悲しみ。
悔しい思いや嬉しい出来事等………
一口では語れない程の、思い出が有ります。
傷つけてしまったこともあり………
心残りがないとはいえませんが………………………」

そう言った時。

それまで我慢していた涙が………彼女から溢れ。

言葉が続かなかった。

………………もしかして………

それは俺へのメッセージか?

ホントは、別れた事を後悔し

心残りがあるんだろうか?

涙を拭い

最後まで気丈に読み上げた彼女の真意は分からなかった。
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