その支配は悪魔の果実
一人で悶々と考えても仕方ない。


とにかく、会社に行かないと。






私は数ヶ月ぶりに、ル・ジェマンド社の前に立った。


またここに来ることになるなんて。



持っていた鞄をギュッと握りしめて、緊張を押し込むように息を呑んだ。


「あ、佐野さん。おはようございます」

聞き慣れた声に振り向くと、爽やかな笑顔の寺川さんと、仏頂面の社長が並んでいた。


呼び名が佐野さんに戻ってる。


あ、じゃない。


「お、おはようございます。これは一体どういう、、、」


「行きましょうか。あとで順を追って説明しますので。」


エレベーターへと促され上へと向かう。


その間も社長は押し黙ったままだ。



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