その支配は悪魔の果実
半年後の秋、社長は結婚する。

慌ただしくなった社内。
日々送られてくる、御祝いの数々。


結婚が現実を帯びてきた今日。
私はこの会社を去ることになってる。

というのも、あのあと私は寺川さんを通して退職を申し出た。


社長は理由を聞かなかった。

寺川さんは少し切なそうに、頷くだけだった。


これでいい。
マンションを出て、新しくアパートを借りた。


皮肉なことに社長の結婚話が浮上してから、脅迫男は姿を見せない。


なんとなく、察しはついていたけど、私がどうこうする立場でもないわけで。

全部が丸く収まるならそれに越したことはない。


「お世話になりました。」

「本当にいいの?」

「寺川さん?」

「いや、、、これが本当に望んだ結果なのかなって思って。」

「、、、はい。これでいいんです。失礼します」

「なにかあったらいつでも連絡ください。力になりますから。」

「ありがとうございます。」

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