その支配は悪魔の果実
のろのろと進んだか進まないか、分からないくらいのスピードで歩く。

一人になって泣きたい。

何もしなかった自分を責めて、後悔の渦に囚われてる滑稽な姿をひた隠して、、、


「あれ?もしかして、佐野さん?」


線のような安定した声。
この声、知ってるなぁ、、、。

俯いていた顔をあげると、やっぱり寺川さんがいた。


「、、、寺川さん、、、」

「どう、しました?泣いてたんですか?」

「あ、いえ、なんでもないんです。すみません。」

「どうぞ」

キレイにアイロンがかけられた青いハンカチ。

「、、、ありがとう、ございます。」

「ここは目立つので、こちらへ」


寺川さんに腰を支えられ、停めてあった車へ誘導された。

< 86 / 142 >

この作品をシェア

pagetop