その支配は悪魔の果実
どこまでも紳士的で綻びがない位に完璧だ。

手入れが行き届いた車内。

香りもさわやか。

あー、落ち着く。


「社長に会いに行かれて、宮さんに会われました?」

鋭い核心に、思わず強張る。


「半分、当たりです。」

「そうでしたか。今、社長は会社です。どうされますか?」


「もう、いいんです。告白してフラれようと思って行ったんです。自分の中で踏ん切りをつけようと。でも、婚約者の宮さんがいました。何も言わずに逃げてきました。」


「佐野さん、私の口から言えるのは一つだけです。もう、何もかもが手遅れということです。素直になるのが遅すぎましたね。あなたも、社長も、、、」


「それ、どういうことですか?」

「詳しいことは本人同士で話して下さい。私は第三者ですから。」


寺川さんの言った意味が分からなかった。

社長、、、も?





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