死にたがりのブルース
17時30分。
窓の外が茜色に染まり、順調に仕事を終わらせた社員たちが帰り支度を始めていた。
俺はというと、夕日色に支配されたデスクの前でまだ作業を切り上げれる良い区切りが見つけ出せずに、もがいている最中だった。
カタカタと急いでキーボードを鳴らす背後に、スッと課長が近付いてくる。
「……佐原くん、ちょっと良いかね」
珍しく低声で呼び止められ、俺は肩をビクリと揺らした。
「なっ、なんでしょうか」
「明日の朝に、会議室に来なさい。大事な話があるんだ」
「え、大事な……話、ですか?」
この時、俺の心臓はドキリと跳ね上がっていた。
(まさか、会社を辞めて欲しいだとか、リストラの話だろうか)
昼休みに後輩の陰口でダメージを受けた脳内では、そんなネガティヴな答えにしか辿り着かなかった。
課長は表情ひとつ変えずに、白シャツの上にスーツを羽織り背を向ける。
「そうだ、君にとって大事な話だ。さぁ、今日はもう帰りなさい。いつも君は遅くまで仕事をしているそうじゃないか。たまには早く帰ったらどうだね」
「いえ! 俺はまだやれます! まだ、終わっていないことが山ほどあ……」
「今日は、帰りなさい。佐原くん、疲れた顔をしているぞ?」
課長の冷静なその態度に、何故か突き放されたような感覚に陥る。
そうか、もうクビにするやつには仕事をさせる意味が無いってか?
クソ課長め。
気付けば社内には誰も残っておらず、自分のパソコンだけが淡い光を放ちながら電源を入れたままになっている。
「……分かりました。失礼します」
唇を噛み締めながら、俺は渋々荷物を纏めた。
窓の外が茜色に染まり、順調に仕事を終わらせた社員たちが帰り支度を始めていた。
俺はというと、夕日色に支配されたデスクの前でまだ作業を切り上げれる良い区切りが見つけ出せずに、もがいている最中だった。
カタカタと急いでキーボードを鳴らす背後に、スッと課長が近付いてくる。
「……佐原くん、ちょっと良いかね」
珍しく低声で呼び止められ、俺は肩をビクリと揺らした。
「なっ、なんでしょうか」
「明日の朝に、会議室に来なさい。大事な話があるんだ」
「え、大事な……話、ですか?」
この時、俺の心臓はドキリと跳ね上がっていた。
(まさか、会社を辞めて欲しいだとか、リストラの話だろうか)
昼休みに後輩の陰口でダメージを受けた脳内では、そんなネガティヴな答えにしか辿り着かなかった。
課長は表情ひとつ変えずに、白シャツの上にスーツを羽織り背を向ける。
「そうだ、君にとって大事な話だ。さぁ、今日はもう帰りなさい。いつも君は遅くまで仕事をしているそうじゃないか。たまには早く帰ったらどうだね」
「いえ! 俺はまだやれます! まだ、終わっていないことが山ほどあ……」
「今日は、帰りなさい。佐原くん、疲れた顔をしているぞ?」
課長の冷静なその態度に、何故か突き放されたような感覚に陥る。
そうか、もうクビにするやつには仕事をさせる意味が無いってか?
クソ課長め。
気付けば社内には誰も残っておらず、自分のパソコンだけが淡い光を放ちながら電源を入れたままになっている。
「……分かりました。失礼します」
唇を噛み締めながら、俺は渋々荷物を纏めた。