死にたがりのブルース
居酒屋を出ると、満点の星空が薄汚れた繁華街を照らしていた。



「はぁー。帰るか」


深い溜息を吐き出し、家路を辿ろうとしたその瞬間。


「やっ、……ちょ、」



何処からか苦しそうな女の声が聞こえてきた。


「なんだぁ?」



火照る顔を動かし、聴覚を集中させて声の正体を探っていると、どんよりと重く静かな路地裏に大小ふたつの影が。



よくよく目を凝らして闇に慣らすと、中年太りしたおっさんが、先ほど聞こえてきた女性に覆い被さっているのが見えた。



メタボのおじさんはスーツを着ており、女性は肩の露出した派手なドレスを着ている。



(はーん。キャバ嬢とその客がいちゃついてんのか?)


白い目で見ていると、どうやら俺の予想は違っていたようだ。


明らかに女性の方が、嫌がっている。



「やめてって、言ってるでしょ! このっ……!」
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