死にたがりのブルース
気づけば俺は、メタボのおっさんを彼女から引き剥がそうと足を進めていた。
「おい、嫌がって、」
そこまで言いかけ、地面に転がっている空き缶をギャグ漫画の如く踏み付けてしまった。
「うおっ!」
身体は前のめりになり、バランスを取るために振り上げた手に握られている仕事用の鞄が、おっさんの後頭部にスコーンと直撃する。
「ギニャァッ!」
萌えアニメのキャラクターのような悲鳴を上げ、脇目も振らずに頭を抑えておっさんはその場から逃げて行った。
ズザァッと派手に転倒する俺と、バサバサ睫毛の付いた目を丸くするキャバ嬢。
地面には、鞄の中から溢れ出した書類やら俺の荷物が、散乱している。