死にたがりのブルース
誰も居なくなった部屋でひとりポツンと、何をするでもなくただ呆然と立ち尽くす。


「はー、俺ってば本当に最低だな」

仕事では上手くいかず、挙げ句の果てには彼女にまで八つ当たりして……。


ポケットから携帯を取り出し、優子宛てにメールを作成する。

《ごめん、言い過ぎた。外暗いし危ないから、戻って来てくれ》


取り敢えず気持ちを落ち着かせようと、マンションの1階の踊り場にある自販機に向かうことを考え、鞄から財布を取り出そうとするも。


「あれ、サイフがない」


バサバサと鞄をひっくり返してみるが、どこを探しても見当たらない。


おまけに優子からの返信も音沙汰なしだ。



「うわー、マジかよ。もう、何もかも投げ出してぇ」



上手くいかない人間関係、迫る仕事の納期、大切な人も自分から去ってゆく孤独感。



その時、競争社会で揉まれ、縮こまっていた心の中の悪魔が、顔を覗かせる。



『そうだ、死んだらもう何も考えなくて良い』、と。
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