死にたがりのブルース
遠くで、繁華街の蛍光色のネオンが光る。


近くで、誰かの家々の明かりが夜を灯す。


マンションの屋上に立ち、ひとり上京してきた街並みを見下ろす。



「夜風ってやっぱり気持ちが良いな」


屋上に繋がる扉は元々南京錠が掛けられていたが、そんなものはこじ開けて壊してやった。


この際、どうなったって構わなかったからだ。


「飛び降りて死んだ後のことなんて、もう知るか」


ただでさえ雁字搦めな世界で生きてきたんだ、死ぬ時くらいは何も考えずに逝きたいさ。



足元を見下ろせばコンクリートの地面が見えるが、視界は暗くそこが近いのか遠いのかよく距離感が掴めない。



ぼんやりとした頭では、嗚呼、俺は今から死ぬんだなぁなんて今更なことを思う。



後ろポケットに突っ込んだままの携帯が、僅かに振動した。


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