死にたがりのブルース
ひとりがそうこぼすと、もう片方も「……まぁ、そうだな」と渋々頷く。
が、しかし。
「先輩が勝手に手伝ってるだけじゃね?」と、口を尖らせた。
「別に俺たちから頼んだことねぇし」
何言ってんだコイツ。
泣いて縋ってきたのは、お前らだろ!
生まれ変わったら絶対に一発ぶん殴ってやる、と来世への自分に誓ったところで口を尖らせている後輩を、もうひとりが小突いた。
「でもさ、最近先輩毎日サービス残業してね? 案外、俺たちの進行状況が悪いのをフォローしてるせいだったりして……」
「そ、そんなの分かんねーよ」
「佐原先輩は優しいから、何も言わず黙って作業してるけどさ……」
全くもってその通りだ。
俺はお前たちが仕事に慣れるまでは無理はさせまいと、お前たちの分の小難しい作業は引き受けてやっていたんだ。
隣では閻魔大王が「ふーん。優しいね」なんて気持ちの悪い台詞を囁いてくる。
そこでピタリと、後輩ふたりは動きを止めて互いに見つめ合う。
「……き、気のせいだろそんなの。とりあえず、今日は俺、大学時代のサークル仲間との飲み会があるし、定時でサッサと帰るから。あ、お前も飲み会くる? 可愛い子いっぱい来るぜ?」
「お、おう」