死にたがりのブルース
20時00分。




大衆居酒屋にやってきた彼らは、未だ悶々とした気持ちを抱えているのが俺には分かった。



「さてさて。彼等は本当に、君が最後に感じた先輩を馬鹿にしている最低な後輩、という評価で合っているのかな?」


値段を見定める鑑定士かのような瞳をして、舌舐めずりをする閻魔大王。



「最低もなにも、自分の仕事を手伝ってる先輩を放ったらかして飲み会に来てる時点で、最低だろう」



ワザとらしくそんなこと確認されたもんだから、思わず冷たい口調で返してしまった。





俺の言葉とは正反対に、可愛い女性とキンキンに冷えたビールを前にして、後輩たちは目には見えない迷いに右往左往している。


「……明日、明日だ! 明日は先輩に声を掛けて、仕事手伝おうぜ」


飲み会に誘った後輩が、迷いを振り切るかのように隣に座っている同期の太ももをボスっと殴り、そう声を掛けた。



殴られた彼は嬉しそうな顔をしながらニカッと白い歯を見せ、殴り返す。




「おう、そうこなくっちゃな。普段お世話になってる先輩に、少しは恩を返さないとな」





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