死にたがりのブルース
世界が暗転し、俺は毎度のことながらあの虚無の空間へと誘われた。

「あいつら、飲み会に行かずに今日俺に声を掛けろよ! なに良い話で終わらせようとしてんだ、全く」


思いの丈を暗闇にぶつけると、いつの間にやら隣に降り立った閻魔はふわりと笑みを浮かべる。


「そんな文句言ってる割には、口元は嬉しそうだけど?」


「まぁ、な。課長も後輩たちも、俺が思ってたよりも少しは良い人だったっていう鱗片が見れて、良かったよ」


「ふーん」


「さ、これでもう気が済んだだろ?俺をいい加減に死なせてくれ」



「え、却下」

即答で願いをバッサリ切られると、世界は白と黒、光と影にチカチカと点滅し始めた。



あ、嫌な予感が……。




「佐原 智一。君には最後、恋人である優子から見た10月5日を体験してもらうよ」




優子の、10月5日か……。



喧嘩したからなぁ。


1番気になるようで、1番見たくはない気もするが。



「さぁ、これで最後だよ、佐原 智一。このループが終わるとき、君に審判が下される。楽しみにしてて」



サラッと怖いセリフを吐きながら、閻魔大王は俺を最後の10月5日へと腕を引いた。
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