死にたがりのブルース


23時55分。




マンションを飛び出した彼女は、嗚咽を漏らしながら1階のロビーを出ようとしていた。



「智くんの、馬鹿っ……。なんであんなこと、……」


泣きじゃくる声に混じって、鞄の中でメッセージが届く携帯の着信音が鳴り響いた。


ロビーを出てマンションの入り口をくぐった優子は、鼻をすすりながらメッセージを確認する。




|《ごめん、言い過ぎた。外暗いし危ないから、戻って来てくれ。》




それは俺が彼女に送った、最期のメールだった。


そして俺の胸に、一抹の不安が生まれ始める。



………………優子が今立っている場所って、まさか……。



俺が飛び降りて、落ちた場所じゃ…………。



< 39 / 51 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop