死にたがりのブルース
23時55分。
マンションを飛び出した彼女は、嗚咽を漏らしながら1階のロビーを出ようとしていた。
「智くんの、馬鹿っ……。なんであんなこと、……」
泣きじゃくる声に混じって、鞄の中でメッセージが届く携帯の着信音が鳴り響いた。
ロビーを出てマンションの入り口をくぐった優子は、鼻をすすりながらメッセージを確認する。
|《ごめん、言い過ぎた。外暗いし危ないから、戻って来てくれ。》
それは俺が彼女に送った、最期のメールだった。
そして俺の胸に、一抹の不安が生まれ始める。
………………優子が今立っている場所って、まさか……。
俺が飛び降りて、落ちた場所じゃ…………。