死にたがりのブルース
《智くん、10月6日の誕生日おめでとう!》
目に飛び込んできたのは、その一文で。
……そうか。
日付が変わった今日、10月6日は……俺の、誕生日か……。
仕事に追われる毎日で、自分の生まれた日すら忘れていた。
けれと、彼女は……優子だけは、覚えていてくれたのか。
刻一刻と迫る、死の降り注ぐ瞬間を前にして、身体がワナワナと震え出す。
《日付けが変わって1番にお祝いしてあげたかったから、今日はご馳走を作って、貴方を待ってたの。けど、結果的には嫌な思いをさせてしまってごめんなさい。智くんがそう言ってくれるなら、今から部屋に戻るね。》
メールの送信ボタンを押すと、空から携帯の着信音が聞こえてきた。
「えっ? なんで上から音が……」
夜空を見上げると、全てを投げ打った黒い物体が、彼女目掛けて落ちてくる。
「優子!!」
必死に手を伸ばすも、身体は彼女を通り抜ける。
落ちてくるそれが人であると優子が気付いた時、静かな夜に悲鳴が木霊した。
「キャァァァァァァ!!」
凄まじい速さでぶつかりあった両者は激しく潰れ、グチャッと嫌な音をさせて崩れ落ちた。