【全巻完結】愛は惜しみなく与う①
結局もっていたナイフでロープを切る
手足が久しぶりに自由になる
「あ、ありがとう」
お礼を言うと、気にするな。たった一言
男は泣きじゃくる椿を無視して部屋をでる。俺は今この人に着いていかないと、また椿に捕まる気がして懸命に追いかけた
震えからか足がうまく動かずに、転びそうになる
「…あ、悪りぃ。歩ける?」
「え?」
「足…動かねーだろ?お前が気にならないなら、おぶるけど…」
そう聞く男はとても優しい声で、ここに来て、ようやく助かったと実感して涙がこぼれた
怖かったよ
泣きじゃくる俺をやれやれと言い、軽々と背中へ乗せる
男におんぶされるなんて、ダサい!けどそんなことどうでもよかった
大きな背中で泣きたかったんだ
「鼻水つけたら殺す」
男はそう言ったが、めちゃくちゃ付いた。鼻水と涙で男の服はぐちゃぐちゃになった
地下にいたのか、地上に出て、男は上着を脱いで背中あたりを確認して、目を細めた
「汚ねぇ」
そう言い笑いながら、お前にやるよ。そう上着を投げてきた