【全巻完結】愛は惜しみなく与う①
「本当にいいんですね?」
この質問は何度目だろうか。
なんとも言えない表情で問いかけてくる。
あたしの答えは決まっている。
「うん。もう決めたから」
長い髪をバッサリと切る。ここにあたしの想いは置いていく。
床に落ちる自分の髪を見て目を閉じた。
大丈夫。あたしはやっていける。
「杏様、終わりましたよ」
目を開け鏡を見ると、よく似ている。
あたしの唯一の妹に
「志木?なんであんたが泣いてるん? 」
「あなたが泣かないから。わたしが泣いてあげてるんです」
そう言う志木は悲しそうに笑った。
泣いてあげてるって、上からやな。
あたしも釣られて笑った
住み慣れた街を出る
「志木ここでええよ」
「ホームまで見送ります」
志木は頑固だな。あたしの荷物を持ち前を歩く。この姿は今日で見納めかと思うと少し寂しい
ホームに新幹線が到着する。
「ありがとう。志木に任せてごめん。みんなのこと宜しく」
ニコリと微笑む志木が遠くなる
そう。あたしはこの街を出る