【全巻完結】愛は惜しみなく与う①

「うん。行くよ。遅かれ早かれ会っとかなあかんからな。駅まで迎えにきて」

わかりました

少しの間の後に、そう言った

覚悟はできている。
泉に運命に抗うように頑張ってみると言った側から、こんな事すると裏切るような気がするけど


あたしにはこの道しかない




「ごめん、あたし今日関西戻らなあかんくなってしもた」



あの事件から沢山悩んで沢山考えた。そして辿り着いたのがこの答え。



妹の死は世間にまだ公表されていないから。
だからこそ出来ることがある。


「え?実家帰んの?」

「うん!緊急らしい!土日やし夕方に出て明日の夜には帰ってくると思うけど」

「緊急って…大丈夫か?」



大丈夫

そう言い聞かせる



「うん!学校には行きたいし、ちゃんと帰ってくるよ!今からさ、駅まで送ってくれへん?」



大丈夫やで、あたしなら
たとえあの人の中にあたしは居なくても



関西までの新幹線の中の記憶は1つもない。
ただただ座って外を眺めていた



あたしは、杏
いまはまだ、杏でいたいよ…




< 227 / 425 >

この作品をシェア

pagetop