【全巻完結】愛は惜しみなく与う①
「うん。行くよ。遅かれ早かれ会っとかなあかんからな。駅まで迎えにきて」
わかりました
少しの間の後に、そう言った
覚悟はできている。
泉に運命に抗うように頑張ってみると言った側から、こんな事すると裏切るような気がするけど
あたしにはこの道しかない
「ごめん、あたし今日関西戻らなあかんくなってしもた」
あの事件から沢山悩んで沢山考えた。そして辿り着いたのがこの答え。
妹の死は世間にまだ公表されていないから。
だからこそ出来ることがある。
「え?実家帰んの?」
「うん!緊急らしい!土日やし夕方に出て明日の夜には帰ってくると思うけど」
「緊急って…大丈夫か?」
大丈夫
そう言い聞かせる
「うん!学校には行きたいし、ちゃんと帰ってくるよ!今からさ、駅まで送ってくれへん?」
大丈夫やで、あたしなら
たとえあの人の中にあたしは居なくても
関西までの新幹線の中の記憶は1つもない。
ただただ座って外を眺めていた
あたしは、杏
いまはまだ、杏でいたいよ…