【全巻完結】愛は惜しみなく与う①
駅から出て数秒後には、目の前に黒の車が到着する。ピカピカの車は少し懐かしい。
助手席の扉に手を掛けようとすると自動で開く
あぁ
「志木、久しぶりやな」
いつもと変わらない志木にホッとする
「杏様も、お変わりないようで」
ニコリと微笑む志木は、あたしがシートベルトを締めたのを確認して車を走らせた
「少し髪が伸びましたか?」
「そーか?あんまわからんわ」
「そちらは楽しいですか?」
「うん。ええ奴らばっかやで」
深くは聞かない。家に帰れば、山ほど志木と話さなければならないから。
でもその前に…
「帰ってすぐ、会わなあかん?」
「……できれば」
眉を下げて、すみませんと志木は謝った。
別に、志木が謝る必要はないのに。
「ええよ。服だけ着替えなあかんな」
何分か車を走らせて見慣れた家に着く
馬鹿でかいその家は、キラキラしたものではなく、あたしにとっては牢獄のような物だ
白のふわっとしたワンピースを身につける
「どう?」
志木が困るってわかってて聞いた