【全巻完結】愛は惜しみなく与う①
総長の涙

杏は本当に馬鹿だ
大馬鹿者だ

なにも俺たちの気持ちを分かっちゃいない

東堂財閥のために。母親のために。そう言って辛い道を選んだ杏


じゃあ俺たちの気持ちは?1つも考えてなんてくれていない


俺はあの日…
誘拐されて死んだかもしれないのは、自分だと報道しろと言ったあの日


自分の不甲斐なさに泣いた


薔薇は強い。スコーピオンなんかに負けない。
なのに杏は…杏の不在を狙われて、俺たちがヘマしただけなのに、無かったことにしてくれと言った


許せなかった


俺は副総長として初めて杏に逆らった


でも杏は冷たく言った


「続けたいなら好きにしたら?」


そう言って薔薇には戻らずに、勝手に東堂財閥の犠牲になることを選んだ


俺は…杏様の執事としてお世話役として幼い頃から一緒にいた。
薔薇では副総長と総長の関係だが、家では杏様の決め事には逆らえない


でも、そうじゃないだろ


残された俺たちは突然の総長脱退、そして数日後の東堂 杏 誘拐事件の報道で心が折れた



知っていたが、ニュースにその名前が流れることが耐えれなかった。
だって杏は…杏様はここに居るのに
< 242 / 425 >

この作品をシェア

pagetop