【全巻完結】愛は惜しみなく与う①

そしてあの、スコーピオンに薔薇が襲撃された日…

俺は杏様と一緒に蘭様の元へ来ていた

杏様はまだ頬にガーゼを貼り、頭には包帯を巻いた状態で東堂家に戻ってきた


なのに蘭様は、杏様に一言も声をかけずに、鈴様の事を早く探せと喚いていた


正直いって、殺意が芽生えた


杏だって、娘に違いないのに
小さい頃は杏だって蘭様に褒めてもらおうと一生懸命頑張っていた


でも幼いながらに気づいたんだ


あ、あたしは愛されてないんだと


杏は鈴様が後継ぎ出来るように身を引き、自ら蘭様の旧姓である、峰岸を名乗った


東堂から身を引くという、杏の意思だった


俺はそんな可哀想で、心が優しく、自分を犠牲にできる、そんな杏が愛おしかった


だから俺は由緒正しい東堂財閥の執事だが、杏様についていった


生涯を杏様に捧げる事を俺は自分で選んだ


そんな杏様と作り上げた大切な場所


薔薇は、俺たちのいない間に襲撃されて、倉庫にいた幹部クラス全員が病院送りになった



あの時の杏は…見てられなかった
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