【全巻完結】愛は惜しみなく与う①
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お風呂からあがると、そこには志木がいた

ほんま、乙女の風呂上がりみるとか、訴えんぞ


「髪を乾かしましょうか?」

「ええわ、もう短いしほっといたら乾く」

「そんな事をすると傷みますよ?髪を乾かすのが私の役目なんで」


そういう志木は待ってたかのように片手にドライヤーを持っていた

はぁ…


「いつの頃の話してんねん」


昔はよく志木が髪の毛を乾かしてくれてた。昔って小学校の時とかやで?おままごと感覚でしてただけや


ま、志木に会うのも久しぶりやしええか



丁寧に髪を少しずつ掬い乾かしている


あーー眠い


気張ったし眠い


慣れへん敬語と標準語つかったし眠い




久しぶりに志木が側にいるから安心して眠い




「杏様?」


……

「え、寝たんですか?」


ありえない。
そう呟いた志木の声は、すこし笑っていたのが最後の記憶



あたしは杏



鈴は妹



でもあと2年であたしは



鈴として東堂財閥を継ぐ




でも





杏として残りたい


そう思わせる人たちが周りにいるから
余計つらい

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