【全巻完結】愛は惜しみなく与う①
ドクン
サトルやったらどうしよ
身体が震えて携帯を押す指が震える
あかん、どうしよ
今すぐ戻らな
足を動かしみのりさんと志木の元へ
「あ、あの!ごめん。あたし今すぐ帰らなアカン用事できた」
部屋にはすでに美味しい匂いが立ち込める
「何かありましたか?」
「……友達が、なんかあったかも」
怖い。ほんまにサトルのせいやったらどうしよ。サトルが慧を拉致してたらどうしよ
「杏ちゃん?震えてるよ?大丈夫?」
みのりさんに肩を抱かれ、その温もりに涙がでそうになる
「杏様?」
「烈火の幹部が拉致られた」
あたしの言葉を聞いて、すこし眉間に皺を寄せて、少しお待ちを。そう言って志木は自分の部屋へ行く
あたしがしっかりせな
もしサトルなら、あたししか、どうにもできひんねんから
「東堂組を動かしますか?」
「……いや、まだ相手がわからんし。雄作(ユウサク)さんに会わせて」
あたしにできることをする
みのりさんは煮物をタッパーに詰めて、保冷バックを渡してくれた