【全巻完結】愛は惜しみなく与う①
俺が転んだと同時くらいに、さっき殴られていた黒髪は、ひぃぃ!と言いながら立ち去っていった
……痛いよ
転んだ拍子についた手がジンジンする
怖い
ザッザッと足音が近づく
俺も殴られるのか?
そう思って目をギュっと閉じたとき、男は言った
「お前、昨日のやつに似てるな。息子か?」
あぁ、これで確信した。こいつは昨日の父さんを殴ってカツアゲした奴だと
でもどうしたらいい?叫んで警察に言いに行くか?まずこの男の前から逃げれるのか?
そう思ったが
男は予想外の反応だった
「親父にソックリだな。これ、お前から返してやれ」
そう言って、数枚のお札と、時計を渡してきた
この、なんとも男の人がつけるには、デザイン可愛らしい時計は、確かに父さんのだった
服汚れるから早く立てよ。それだけ言って男はその場を立ち去ろうとする
どういうことだ?この人がカツアゲしたんじゃないのか?でも、お金と時計はこの人が持っていたし…
どうなってる
「あ、あなたが父さんからカツアゲしたんですか!?」