【全巻完結】愛は惜しみなく与う①
…慧が起きてくる
「杏がいない」
「え?トイレじゃないの?」
「ちがう。電話にも出ない。きっと俺らより先に起きてるはずなのに」
俺の焦り具合をみて、事態を飲み込んだのか、慧も携帯を確認する
ぞろぞろと皆んな起きてくる
杏に電話をかけ続けていたら、コール音が止んだ。
「杏!!!」
『…あ、この携帯の持ち主ですか?』
やっと繋がった携帯から聞こえてきた声は、知らない奴の声だった
「お前誰だ」
『え、あ、あの…拾っただけです』
「どこで拾った?」
『A区のコンビニです…川原沿いの…」
「近くのコンビニだ。いくぞ!」
俺の声でみんながパッと手を止めて動く
携帯落としただけならいいんだけど…嫌な予感がするもんだから
「おい、泉!携帯出たやつは?」
「知らない奴。落ちてるの拾っただけだ」
ここからコンビニは2分くらいだ
朝食用か、朝からコンビニに立ち寄る人は案外多い
駐車場をキョロキョロしていると、サラリーマンのおじさんを見つけた