【全巻完結】愛は惜しみなく与う①
小さくなった泉の背中を追う
一番恐れていた展開だ
写真は撮られるわ、仕事先もすぐ特定されるし、それに…
タイミング悪すぎる
仲間に連絡したと言っていたから、きっと何人かはあの女を探し回ってるはずだ
先に見つけれたらいいが…
泉に追いついたと思ったら、手で静止された。
「し!静かに」
泉は物陰に隠れて何かを見ている
その泉の表情は、見てはいけないものを見てしまったかのような…少し潤んだ瞳は、当分忘れられない
泉の後ろに隠れて見た光景は、言葉では言い表せれないものだった
「ま、てよ。あれ、あの女?」
俺たちが必死にさがしていたあの女は
倒れた4人の男の中で、1人でたたずんでいた
その姿は別人のようで
女の頬には血がついていた
手が震えた
次々に飛び込んでくる受け入れ難い状況に、目眩がする
倒れた男たちは黒蛇だと思う
誰一人ピクリともしないが、その中でなにひとつ表情を変えずに、あの女は携帯を取り出した
このまま…見ていたらいけない気がした