【全巻完結】愛は惜しみなく与う①
「泉…」
声は出ただろうか。絞り出した声に泉は反応した
「朔…黙ってろ」
俺動けねーや。声も出せない。
なんだ、この空気は
そして女が話す声だけが聞こえた
「ごめん、さっきは取り乱した。ちょっとスッキリしたら落ち着いた
んーん。大丈夫だってば
うん…うん。わかってる
別にあたしは怪我してへん。うん、わかってる。
えー?誰にも見られへんと思う
うん?あー
うん、うん。顔見られる前にヤッたし、あたしがヤッたのは誰も知らん。
志木?ごめん。鈴の事考えたらとまらへんくなって…スコーピオンのこと、もう少し調べてくれへん?うん。そう…
スコーピオンだけは…あたしの手で、うん。
うん…わかってる
殺さへん。さっきのは嘘
ちゃんと警察にぶち込むから……協力して」
なんだよ
なんなんだよ、この話は
本当にあそこに立ってるのは昨日の女か??
その時泉が小さく呟いた
スコーピオン…と
その後ありがとうと言って女は電話を切り、倒れた男達には目もくれず、歩き出した
夢か?これは
助けに行った女は、一人で敵を蹴散らしたってことか?俺の認識は正しいよな?