【全巻完結】愛は惜しみなく与う①
早歩きしていた泉は足を止めてこちらへ歩いてくる。
なんなんだよ
お前はなにを考えてるんだよ
「悪かった。勘違いしないでくれ。
俺も…よく分かってない。気が動転してる。でも…確かめたいことがある…。だから少し時間が欲しい!頼む」
なんで…
「頭あげろよ。チームの総長が幹部に頭下げんな。みっともねぇ。わーったよ!言わねぇ!黙っとく!でも……俺には思ってること言えよ。2人の中でこの話は止めておこう」
はぁ…総長が頭下げてんじゃねーよ。気が動転した?俺の方がしてるっつーの。
手も震えたし、頭も追いつかないし
ただ泉がそう言うから、とりあえずはこの話は伏せておこう
「ありがとう、助かる」
少し眉を下げて笑い、俺の歩みに合わせて隣を歩いてくれた
「なんで新の所に行くんだ?」
「スコーピオンって…杏が言ってたろ?」
……言ってたか?
そんな細かく会話なんて聞いてられっかよ
こちとら動悸するのを抑えるのに必死だった
「スコーピオンって聞いたことあるんだ…ただ思い出せない。なんだったか…誰かから聞いた気がするんだ」