宇宙で一番☆幸せな政略結婚

「あれ? いない・・・」

 ベッドで寝ていた女性が居なくなっているのを目にして、聖竜は驚いた。


 時計を見るとまだ4時30分だった。

「こんな朝早くに、もう帰ったのか? 」

 窓の外は朝日が昇ってきていた。


 ふと、足元を見た聖竜は何かが落ちているのを目にして拾った。

 手帳のようだ。

「なんだ? この手帳」

 聖竜は中を見てみた。

「え? ・・・」

 中を見て驚く聖竜。





 急ぎ足でホテルを出て来た女性は、走って駅前までやってきて一息ついた。

 
 駅前の時計台の下で、腰かけて登ってくる太陽を見つめ、フッとため息をついた。

「・・・どうしよう。何も覚えていない・・・。どうして、ホテルなんかにいたのかしら? 」

 どうやら女性は何も覚えていないようだ。

 お酒のせいで記憶が飛んでいるようである。

「・・・まっ、いいか。・・・誰だったのか判らないけど。・・・もうこの先、一生、することはないのだから・・・」

 太陽を見てフッと笑った女性は、立ち上ってそのまま歩いて去って行った。





 名前も名乗ることなく、一線を越えてしまった2人。

 もう二度と会う事もない。

 でも、会えなくてもなんだか想いが残っているような。

 そんな気がしていた。

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