宇宙で一番☆幸せな政略結婚
「式の準備が整いましたので、ご案内します」
介添人の手を借りて、あるとは立ちあがった。
立ち上がったあるとは、かなり長身。
ドレスを着てハイヒールを履いているせいもあるが、推定170センチ近くはあると思われる。
「・・・今から・・・買われてゆきます・・・」
小さな声であるとは呟いた。
チャペルの扉が開き、介添人とあるとが入ってきた。
身内だけで式を挙げようとされている為、参列者は竜太と聖香、そして、あるとの父の宗一郎だけである。
「まぁ、とっても綺麗な人ね」
「ああ、宗一郎君が言うだけある。驚いたよ」
聖香も竜太も、あるとを見て驚いている。
「あると、おめでとう。とっても綺麗だよ。母さんには、ちょっとだけ負けるかもしれないけどね」
宗一郎は少しだけ涙ぐんでいた。
祭壇の前で待っていた聖竜は、隣にあるとが来るとそっと見つめた。
あるとは恐る恐る、聖竜を見た。
目と目が合うと、聖竜はとても嬉しそうに微笑んだ。
だがあるとは、なんとなく俯いてしまった。
目と目が合っても何も反応しない、そんなあるとを見て、聖竜はもしかして覚えていないのだろうか? と思った。
誓いの言葉が読まれて。
指輪の交換がなされ。
誓いの口づけが始まる。
向き合う聖竜と、あると。
そっと、あるとのヘッドドレスを上げると、聖竜の目が潤んだ。
あるとは俯いたまま、聖竜を見ようとはしなかった。
そっと唇にキスをされると、あるとはハッとなった。
拍手が響き、チャペルの鐘が鳴り響いた。
二人の政略結婚の幕開けでもある鐘の音。