宇宙で一番☆幸せな政略結婚
5章
聖竜とあるとが結婚して1ヵ月が過ぎた。
相変わらず2人の距離は遠いままだった。
聖竜は仕事が忙しいようで、帰りはいつも夜中になっていた。
あるとが起きて待っている事もあるが、殆ど寝てしまってから帰って来る聖竜。
休みの日も仕事があると言って、出かけてしまい2人で出かける事もなかった。
夜中に帰ってきても、朝は早く起きて聖竜がいつも朝ご飯を作ってくれている。
たまには、あるとが早起きをして作ろと思っているが、6時に起きても既に聖竜は起きていて書斎で仕事をしているくらいだった。
寝る時間、殆どないくらい働いている聖竜。
大企業ともなると、そんなに忙しいのだろうか?
会話もほとんどないが、あるとは少しだけ不安を感じていた。
それでもあるとの心の支えになっているのは、あの名前も知らない「大好きな人」からの電話だった。
いつも朝9時前後にかかって来る事が多く、それほど長電話はしていないが、話しをすると頑張ろうという気持ちが湧いてきて、嫌な思いも不安も吹き飛ぶくらいだった。
今日も「大好きな人」が電話をくれた。
「・・・はい、元気にやっていますよ。貴方は? 」
(ああ、元気だけどちょっとだけ疲れを感じていたよ)
「え? お仕事で? 」
(ああ、単価の高い仕事がもらえて。その仕事が終われば、目標が叶うから、ちょっと気合入れているんだ)
「すごいですね。目標を持って進んでいるって、素敵です」
(有難う。仕事ばかりしていると、季節感も解らなくなっていたんだ。もう、外はすっかり秋色に染まり始めているんだな)
「ええ、涼しくなってきましたからね」
(紅葉見るのは好き? )
「はい。・・・見に行く事はしたことありませんが。いつも、仕事の行き帰りで見る並木道がとても綺麗でした」
(そっか・・・。そうだな、綺麗な景色って癒されるからな)
「ええ」
(じゃあまたね)
「はい」
電話を切ると、あるとは嬉しそうに微笑んだ。