宇宙で一番☆幸せな政略結婚

 あるとが帰宅すると、聖香が様子を聞きに来たが

「すみません、ただ胃の調子が悪いだけでした。・・・期待させてしまって、ごめんなさい」

 謝るあるとに聖香は

「謝る事ないじゃない。まだこれからなんだから」

 と、言った。

 特に残念そうな顔もしておらず、気にしていない様子の聖香に、あるとはホッとした。



 その日も、聖竜は遅くまで帰って来なかった。

 あるとはゆっくり考える時間が出来て、ちょうど良いと思った。


 ベッドに入ってもなかなか眠れず、ずっと考えていた。


 お腹の子を中絶して、聖竜との結婚生活を続けるのか。

 お腹の子を産むために、聖竜と別れるのか。


 時々おそってくる吐き気に、お腹の中では成長している赤ちゃんがいるのだと実感させられるあると。


 お金で買われてきた結婚。

 父の頼みだと思ってそうした。


 聖竜と別れたら、きっとこの先もう結婚する事はないだろう。

 子供を産んで1人で育てていく事はできると思う。

 産まれてきた子供はお父さんがいなくて、悲しい思いをするかもしれない。

 それでも・・・


 答えは出ないまま、いつのまにか眠りについていたあると。





 
 翌日目を覚ましたあると。
 
 隣に聖竜はいなかった。

 時間は6時30分。

 もう起きているのだろうか?


 身支度を整えてリビングに来たあると。

 リビングは静かで、キッチンも昨夜のままだった。


 書斎にも聖竜の姿はないようだ。

 帰ってきていない。

 無断で外泊する事は、今まで一度もなかったのに。

 ふと、聖竜が書斎で女性と話していた事を思いだした。

「まさか・・・あの人と? 」


 親し気だった女性は「せいちゃん」と呼んでいた。

 外泊先はその女性の所? 

 モヤっとした気持ちが湧いてきたあると。


 
< 42 / 61 >

この作品をシェア

pagetop